アルティメット エキサイティングファイターズ 外伝9 〜覆面の苦労人〜 |
アルティメットエキサイティングファイターズ・外伝9 〜覆面の苦労人〜 〜第1部・第06話 聖獣と神獣と魔獣と9〜 ナーシャ「ミオルディア様、ヴィエライト様とティエメドラ様は、今どちらにいらっしゃるか分かり ますでしょうか?」 魔獣ミオルディアと合流したので、ラフェイドの街に戻る事にした。その際、次の目標たる 聖獣と神獣の所在を彼女に尋ねるナーシャ。 ちなみに、ヴィエライトは神獣の名で、ティエメドラは聖獣の名前らしい。両者とも女性 である。ミオルディアの元の巨体からして、他の2人も同じ様な巨体なのだろう。 また、ミオルディアの人型は、俺の背丈より小さめである。長身のリドネイよりも低い。 大凡170cmぐらいだろう。しかし、元の巨体からして、トーラと同じ様に異常染みた腕力 などを発揮すると思われる。 これでレスラーに転身したら、さぞかし豪快な姿になるだろう。変な興味が湧いてくるわ。 ミオルディア「ヴィエライトとティエメドラか。最後に会話をした時じゃと、人間の街に潜り込むと 言っておったな。」 テネット「となると、該当先は王国と帝国でしょうか?」 ミオルディア「詳しい事は分からぬが、人を探ると述べておったしの。大凡当たりじゃろう。」 ミオルディアの言葉に、右手を顎に当てて思案するテネット。神獣と聖獣が、人の街に潜り 込むと言うのだ。それだけ、不穏な様相を察知したのだと思われる。テネットの方も思う所が あるのだろう。 そう言えば過去に、ウェイス達が王国と帝国とのイザコザに関して述べていた。例の男爵家 の問題も、王国で起こっているとの事だ。となれば、次は王国に赴く必要が出てくる。帝国は その次になるだろう。 ミスターT「テネットさんや、ここから王国と帝国の距離はどのぐらいだ?」 テネット「両者共に同じぐらいの距離ですね。」 なるほど、ほぼ同じ距離と言う訳か。ラフェイドの街が片方に近い場合は、下手な横槍が 発生してくるのだと読めてくる。両国共に同じ距離があるのなら、この街は中立街と言える。 王国と帝国でイザコザが本格化した場合、ラフェイドはかなりのダメージを受ける可能性が 出てくる。侵略に関すれば、正に中継地点となる。もしその予兆が現れれば、事前に住人を 避難させる必要が出てくる。 ウェイス達が述べていた事を踏まえれば、亡命する先は帝国が無難だろう。王国は色々と 問題を抱えているらしいしな。要らぬ火種を抱える存在には、関わり合いを持たないに限る。 ティルネア「・・・戦争まで視野に入れているのですか・・・。」 ミスターT「人の本質を見れば、自然とそうなっちまうわな。」 こちらの心中を察知して、表情を曇らせてくるティルネア。創生者たる彼女からすれば、 今後の予想は十分考えられるだろう。その彼女の考えを、俺の一念が後押ししてしまったとも 言える。 我が子当然の世上の生命を踏まえれば、こうしたイザコザは見るに耐えないものだろうな。 だからこそ、遂行者の存在が必要なのだろうから。まあ言葉は悪いが、汚れ役を押し付ける 形になるのが何とも言えないが。 ミスターT「前にも言ったが、一切の汚れ役は俺が全て担う。お前さんは、創生者としてドッカリと 据わっていればいい。」 ティルネア「はい・・・。」 そう呟く彼女の胸中は、相当な重苦しさがあるのだろうな。見ているこちらも辛くなる。 故に、遂行者の役割が必要になる訳だ。今後の俺の生き様次第である。 ミオルディア「お主は・・・何処までもお人好しなのじゃな・・・。」 ミスターT「皮肉にしか聞こえないがね。」 ミオルディア「フッ、違いないの。」 出逢って数時間だが、俺の生き様の触りを感じ取ったのだろう。ミオルディアの口調が、 今までにない程の優しさに満ちていた。盟友たるティルネアの肩を持つのもあるのだろう。 その彼女を支えているこちらにも、同様の一念を向けてくれている。 聖獣と神獣と魔獣は、言わば遂行者であろう。創生者ほどの実力はないが、世上を守ると いう意味合いでは、彼女達の存在は非常に重要だ。下手をしたら、ティルネア以上に重要な 役割かも知れない。 どうしてこうも、周りには苦労する面々が多いのか。己が抱えた宿命に翻弄される部分が あれば、己が使命を全うしようとする部分もある。それらを含めて、今を生きているのだ。 そんな彼らを支えられる事に、とにかく感謝するしかない。地球より召喚された存在だが、 こんな俺でも役に立てるなら本望である。 ラフェイドの街に戻ったのは、辺りに夜の帷が下りた頃だった。一度、冒険者ギルドへと 戻り、ナーシャの非公開依頼を終える事にした。 とは言うものの、今現在は全体の3分の1しか終わっていない。残りは3分の2である。 それに対象となる存在は、王国と帝国にいるらしい。この依頼に関しては、当初思った通りの 長丁場になりそうだ。 特に王国は、相当アクドイ感じらしい。普通ならば、帝国という場所がアクドイ存在の位置 づけとなっている。この異世界ベイヌディートは、聊か状況が異なるようだ。 まあ、王国が善であり、帝国が悪であると、一体誰が定めたのやら。そこに住まう人々や、 布かれている法律などにより悪となる。国自体は、運営する存在で全て変わってくるしな。 今現在は、王国が悪で、帝国が善という感じである。 ただ、何処まで酷いのかは、やはり現地に赴いて確認するしかない。まあ、地球での権力 機構を目の当たりにすれば、恐らく微々たる悪態の様な気がするがな。 トーラ「あ・・あの・・・初めまして、狼人族のトーラと言います・・・。」 冒険者ギルド内に入ると、何時もの席にウェイス達が屯しているのが見えた。その中にいる トーラが慌てて駆け付けて来た。駆け付けた先は魔獣ミオルディアである。 トーラは狼人族で、魔獣の下位種族だ。となれば、ミオルディアは彼女の大先輩となる。 恐縮染みた雰囲気を見れば、それが如実に現れているといえる。 ミオルディア「トーラと申すのじゃな。我はミオルディアじゃ、よろしゅうに。」 トーラ「は・・はいっ! よろしくお願いしますっ!」 自己紹介を行った後、深々と頭を下げるトーラ。彼女自身、かなりの実力者に分類される。 その彼女が、ミオルディアに対して頭が上がらない状態だ。相当な格の違いが見て取れる。 と言うか、どちらかと言うと姉妹の様な感じに見れる。 しかし、人型のミオルディアを一目見て、即座に反応したトーラは凄いわな。野性的感覚と いうべきか。魔物族群は、直感と洞察力がズバ抜けて優れている。それが現れていると言える だろうな。 まあ、人間の中でも、人知を超えた能力を持つ人物はいなくはないが・・・。 後半6へと続く。 |
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